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野見の海

父が後にその当時のことを思い出して作ったのであろう多くの短歌から当時の心境を推し量る作業は重くもありますが、NHKの番組がきっかけとなり、娘としてはやっておきたい、やらなくてはいけないことの一つと思えてきました。幾つか心に残ったものを紹介しますと、、。

・身を挺する外に術なき戦況と特攻を志願すかへりみるなく

・今日よりは防人たらむ健気だて海兵隊の門をくぐりぬ

・最も安き棺桶ならむベニヤ製の震洋艇にわれら死すべく

予科練の部下を率いて艇隊長の責を負いたり我二十二歳

大学生であったさ中、戦況の厳しき中を、このような覚悟をして特攻へ入ったのですね。そして、厳しい訓練の様子のうかがえるもの。

・浜風が雪を伴ひ吹きしまき櫂を持つ手の知覚失せゆく

・手に尻に血の滲みつつカッターを漕ぐきさらぎの海風のなか

・駆け足をしつつ手旗の信号を頭に描けり刻を惜しみて

・釣り床に冷えし体を沈めつつ棒となりたる脚さすりたり

連合艦隊司令長官戦死せりなほ訓練に励むほかなく

・身の疲れ癒さむとして横たわる夜を藪蚊の多きに眠れず

・死の恐さまざまざ知りぬ蜘蛛の子をさながら弾に逃げまどいつつ

・飛行服を纏えるわれら空ならぬ海をおのれの死場所と定む

・雨蛙の愛称さながら黄緑のベニヤの小舟を死の友とする

・穴あける防水服を着たるまま荒天訓練に夜を徹したり

・体当たりの訓練中に水死せしとも友あり葬ふゆとりすらなく

黒潮の洗える寂けき野見岬敵むかふべくわれらは待てリ

しかし、そのような厳しさの中にもほっとできるものや、父らしいなと思う歌もいくつかあります。

・朝起きのレースに負けし新兵が飯を抜かれて青ざめ立てり

・父のごとき第二国民兵を部下に持ち厳しき訓練を続くるに堪えず

・鬼少尉の陰口知りつつ棒持ちて風紀係われ路地を見回る

・基地にありて整備しくるる兵のありわれは安んじ震洋艇に乗る

・基地司令にかけ合い焼酎をせしめたり整備兵らに振る舞う一夜

・艇隊長を慕ふ少年兵この子らを死なしむるのは酷と言うべし

銀シャリは当番兵に与えたりわれは麦飯食ひて足らえり

・特攻兵われに賜びし煙草を与えたる当番兵が紫煙くゆらす

・兵もわれも訓練の厳しさ忘れおり洋上わたる涼風にしばし

・焼酎に南京豆さへ馳走なり今宵村人鰹を贈りく

そして、ついに終戦

・エンジンを整え出撃の準備せり終戦の報を信じかねつつ

・基地司令よりの命を待てども音信なしポツダム受諾を知らざりし幾夜

・むらさきの波鎮もれる野見の海まこと戦は終わりしならむ

終戦の報伝われり出撃の命に盃汲みかわすなか

・終わりたりああ終わりたり今日よりは何をなさむかわれら丸腰

・夏までの命とさだめし特攻の訓練さなか戦い終わりぬ

・乗艇の服装のままごろ寝する戦い終わりてなほこの幾夜

・捧げむと決めにし命永らえぬ停戦告ぐるモールス信号

・鉢巻を幾たび強く締め直し聞けども戦は敗れしといふ

本当に戦争は終わったのか、混乱の中にあった隊内の様子も垣間見えます。おやっと思ったのは次の歌。野見の地に心を寄せる人があったのでしょうか。

・野見を愛し高知を愛し国を愛すひとりの女を恋ふる心捨て

また、本当にこんなもので戦果があがるのか、犬死ではないのかと懐疑の気持ちを持っていたのかと思える歌もありました。当然です。

・三百キロの爆弾積めば艇速はとみに衰ふ戦果あがるや

また、隣の部隊は終戦後の16日になって火の手が上がります。手結部隊の全滅事故。並んで出撃を待っていた震洋艇の一隻からオイル漏れがあり爆発、全震洋艇に引火。戦争はすでに終わっているのに、、の本当に痛ましい事故も起きていたのでした。でも当時何が起こったのかわからずに作ったらしい歌

・過失なるか自爆したるか夜を焦がし隣の隊に火柱上がれり

ずっと後に再度この地をおとずれて詠んだと思われる歌

・この海に特攻隊の訓練を重ねし日ありひたむきなりき

目を背けてはいけない大変な時代の青年の気持ちがひしひしと伝わってくるようでした。